はじめに、正常なまぶたについて説明します。
①正常なまぶたは、動眼神経(どうがんしんけい)が上眼瞼挙筋白筋(じょうがんけんきょきんはくきん)を収縮させてまぶたを開けようとします。
②それにより、ミュラー筋のなかにあるミュラー筋機械受容器というセンサーを引っ張ると、三叉神経固有感覚(さんさしんけいこゆうかんかく)という感じられない感覚が生じます。
③その三叉神経固有感覚神経(さんさしんけいこゆうかんかくしんけい)が、上眼瞼挙筋赤筋(じょうがんけんきょきんせききん)を収縮させます。ひざの前の膝蓋腱をハンマーで叩くと、大腿四頭筋の赤筋が反射的に収縮するのと同じです。
④上眼瞼挙筋白筋(じょうがんけんきょきんはくきん)と上眼瞼挙筋赤筋(じょうがんけんきょきんせききん)の収縮が、腱膜とミュラー筋を介して瞼板を持ち上げるとでまぶたを開けることができます。
⑤交感神経が緊張すると、ミュラー筋が収縮して少しまぶたが開けるのを助けています。
まぶたを開け続けているということは、この神経回路が連続的に興奮していると三叉神経固有感覚(さんさしんけいこゆうかんかく)が出続けて、上眼瞼挙筋白筋(じょうがんけんきょきんはくきん)と上眼瞼挙筋赤筋(じょうがんけんきょきんせききん)の収縮がいつも起こっていることになるのです。
最近の私達の研究(PLOS ONE)で、まぶたの開け具合で、覚醒・筋緊張・交感神経緊張を統制していることがわかりました。 三叉神経固有感覚(さんさしんけいこゆうかんかく)を運ぶ神経細胞体である、脳幹に入り込んだ三叉神経中脳路核(さんさしんけいちゅうのうろかく)は、青斑核とギャップジャンクションという電気的結合で継っていて、まぶたを開けることで、青斑核を刺激して、覚醒・筋緊張・交感神経緊張を統制しているのです。
したがって、まぶたを開ける機能の病気になると、青斑核を介した覚醒・筋緊張・交感神経緊張の症状をもたらす可能性が示唆されたのです。
そして、まぶたが下がった状態を眼瞼下垂と呼び、症状を持っていると眼瞼下垂症と呼びます。